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2. 敦煌の莫高窟における観光資源の保護・保全

(1)敦煌研究院
敦煌研究院は1945年9月に敦煌芸術研究所としてスタートした。1984年に拡張して敦煌研究院と改称され、中国国家文物管理局と甘粛省の二重の管轄下に置かれた。360名のスタッフを揃え、うち、150名の専門職(そのうち32名は高級専門職)で、次の3つの目的のために活動している。
?石窟の保全
?敦煌学の研究
?敦煌(莫高窟、楡林窟)の広報、宣伝活動
その成果として、600余の論文の発表、20余冊の著書、300枚以上の壁画の模写及び厳選した50の石窟の写真集を発行した。
これらは敦煌の観光の振興に非常に役立ち、観光客が来たことにより増加した収入等を観光資源の保護・保全の原資にも充てている。
(2)敦煌における樋口団長の講演
10月15日に敦煌の「敦煌山荘」において、樋口隆康団長による「観光振興と観光資源の保護」という演題の講演があった。旅游局、旅行杜、国際ホテルの関係者等の50名を越える人数が参加した。以下に講演内容をまとめる。
樋口隆康団長の講演
「観光振興と観光資源の保護」
私は考古学者でありまして、最初に敦煌の莫高窟に参りましたのは1957年です。それから10回近く参りましたが、敦煌はその度に大きく発展していると感じます。例えば今日お話しさせて頂きますこの会場は最近出来たらしいのですけれども、いかにも清朝の宮殿のような立派な建物で大変光栄に思っております。敦煌の現代の状況を見てみますと、何か全体に熱気がこもっておりまして丁度今から千数百年前のシルクロードの中心であった漢・唐時代を再現しているような雰囲気を感じております。
今回は私の勉強のために来たというよりは観光を促進するという、そういう仕事でやってまいりました。私の考古学という地味な仕事と、観光といういかにも派手に見える事業とは、一見何かそぐわないように思われますので、その点をちょっとご説明しておきたいと思います。中国で発明された漢字それを日本でも使っておりますが漢字というのは本当に素晴らしい文字だと感じます。
例えば「ツーリズム」という英語を「観光」というように書いておりますが、観光というのは実は光を見る、光輝く素晴らしいものを見る、即ち、学ぶという意味であることは皆様よくご存じのところであると思います。私は敦煌という素晴らしい優れた仏教遺跡を見ることによって勉強してきたわけですが、私の今までやってきたこと、これが将に観光にあたるんだというような認識を持ったわけです。この敦煌の素晴らしい優れたものを中国の人は勿論、日本のみならず世界の人々に見てもらいたい。そういうことを促進するという仕事であるということで、喜んで協力させて頂きたいと思っております。今回私たちがやってまいりましたのは、実は日本の大阪にアジア太平洋観光交流センターという機関がございますが、これは国際的な観光の機関としまして世界観光機関というものがあり、その世界の色々な観光活動を支援し、促進するという団体でございます。その第一の事業として、このシルクロードを取り上げたわけです。そういう意味で、シルクロードの観光を促進するにはシルクロードの第一の観光地である敦煌、そこをまず学ぼうということでやって参りま

 

 

 

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